DXの推進の前に社内の情報システム化を

最近、耳にする「DXの推進」。未だ、なにそれ?という人もいるけど、日本の働き方改革においても、喫緊の重要課題です。

ちなみにDXとはデジタルトランスフォーメーションのこと。デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)ならDTだろう、と言いたいところですが、英語圏では「Trans」を省略する際にXと表記することが多くDXと表記するそうです。

さて、デジタルトランスフォーメーションの詳しい内容については、専門書に譲るとして、なぜ、重要で、中小企業でやるべきことは何かについて書いてみることにします。

2021 年までに、デジタルトランスフォーメーションが日本の GDP に約 11 兆円貢献する見通し

この見通しは、マイクロソフトと IDC による調査結果で、詳しくは以下の内容となっています。

本調査では、アジア経済全体において、DX(デジタルトランスフォーメーション)が劇的に加速することを予測しています。デジタルトランスフォーメーションは2021年までに、日本のGDPを約11兆円、年間成長率を0.4%増加させると推測されることに加え、2017年には、GDPに占める割合は約8%に過ぎなかった、モバイル、IoT(モノのインターネット)およびAI(人工知能)といったデジタルテクノロジを直接活用した製品やサービスが、2021年までに6倍以上の約50%までに到達すると予測しています。

いかがですか?

なんだか凄いことになりそうなレポート。しかも2021年!この時点で2年後!劇的な変化が起こりそうな文面です。焦らされる内容ですが、消費税の軽減税率ですったもんだしている状況で、DXに向き合える企業はそうそうないのが現実では?と思うところです。

では、DXの推進がどんな世の中を実現するのでしょうか?
今までの人間とシステムの関係は、

  • 人間が決めたことを機械にやらせる。

意思決定は人間がやってきました。しかし、ご存知の通り人工知能(AI)の発達により、機械による意思決定も実現間近となっています。既にEC業界大手企業では、モノを売る量も価格も機械が決め、むしろ、機械化できない部分を人間が担っている状況です。近い将来、

  • データをもとに機械が決定し、それを実行するために人間が動く

そんな時代を想定しなければならないのです。長時間労働問題解決のための業務効率化の視点でも必然と言える内容なのです。

現実的な対応

全く無関係では無いことはわかるけど、では、どう対応するのか?現時点では、大手企業も模索しているところでしょう。具体的事例が生まれ、他業種に横展開され、更に事例が蓄積され、徐々に中小企業に降りてくるであろうことを考えれば、現段階では、社内情報のデータ化をきちんとすることだと思います。社内の情報システムの活用状況がどうなのか?販売情報は?生産情報は?在庫情報は?また、それらのマスター管理は?どうでしょう。これらのことが整理できていないとDXどころではありません。

ただ、生産設備や営業支援ツールのように、直接的に価値を生むことがイメージできる投資に比べ、情報システム整備への投資は、その価値を感じにくい部分があります。その通りで、情報システム整備自体が価値を生むわけではありません。重要なのは情報をどう活用するかにあります。

情報システム化の問題点

システム化ありきで開発に入ると間違いなく失敗します。活用されずに終わる可能性が高いからです。なぜ、活用されずに終わるのか?その理由は2つ考えられます。

一つ目は、仕事が起点でないことです。仕事を合理的に進めるためのアウトプットを想定しないシステム化は、ユーザー不在のただのゴミです。製造指示書を出すのに20分も30分もかかるようでは、生産現場では使えません。現場の仕事でどう使われるのかが分かっていない開発は往々にしてこのような結果を生みます。

二つ目は、仕事が整理できていないことです。仕事が整理できていないと、情報システム化は困難です。情報システムはデジタルです。0,1,0,1,できちんと組み上げられた世界です。曖昧な数字は理解できないし、忖度もできません。ファジー制御といっても、より細かな条件をパターン化しているわけですから、きちんと整理されているわけです。なので、情報を整理することは、仕事の内容を整理することでもあるのです。

情報システム化の課題

二つの問題を踏まえて、情報システム化を成功させるには、問題に対応した課題をクリアしなければなりません。

要件定義

まず、仕事を起点に考えて、きちんと要件定義できる人材が必要です。現場の人は情報システムがよくわかりません。システム化を請け負うベンダーは現場の仕事の内容を知りません。両者をつなぐ要件定義をできる人が必要です。

よくあるのはベンダー側が、仕事の中身を聴きながら要件定義をまとめるパターンです。現場の人が情報システムを理解するよりは現実的なパターンです。しかし、要件定義の責任は発注側にあります。開発後に仕様で揉めても、要件定義を満たしていれば、それ以上の作業は追加料金を取られても仕方ありません。

必要なのは、情報システムは解らなくとも、仕事のプロセス、フローを細かく理解し、必要なアウトプットを得るために必要な情報は何なのか?それさえ理解できている人がいれば、ベンダーのサポートできちんとした要件定義が作成できます。

仕事の視える化

情報システム化が遅れている会社は、多くが中小企業です。なぜ、そうなるのか?もちろん資本が小さいこともありますが、人事異動が少なく、仕事が属人的になっていることもシステム化が進まない要因です。

個人に仕事が貼りつくと、その仕事を完璧にこなそうといろんな例外に対処するように努力します。そして、臨機応変に対応し続けた結果、仕事が複雑になって、その人にしか出来ないと思われるような状態になり、仕事がブラックボックス化します。

システム化には、仕事の整理が必要です。ブラックボックス化した仕事を視える化することです。誰がやっても仕事が遂行できるというレベルまで整理できれば、情報システム化は現実的になるでしょう。

まとめ

情報システムを上手に活用すると仕事の生産性は向上します。現場の人に喜んで活用される情報システムを構築するには、「きちんと要件定義をできること」と「仕事を整理し視える化する」ことです。そのための人材を時間をかけて育成するか?コンサルなど外部の力を借りて短期で身につけるか?

「2021 年までに、デジタルトランスフォーメーションが日本の GDP に約 11 兆円貢献する見通し」

というレポートを信じるなら、情報システムの構築や整備は急いだ方がいいのかもしれません。