顧客との関係性を重視した小売店のコミュニケーション

情報通信端末の急速な普及に伴い、インターネット普及率は、2008 年に比べて、全体的に上昇しています。特に、高齢者層での普及が進んでおり、若者との情報格差は縮小傾向にあるとようです。つまり、機械に疎いと思われている高齢者層にもネット通販が介入できる環境がすでに整っているのです。そんな中、小売実店舗はどうあるべきか?

ネット通販の主役は動画へ

 価格競争や、送料無料・当日配送などのサービス競争に加え、ネット通販の世界では動画による商品紹介が主役になる時代を迎えました。動画通販の元祖はテレビ通販ですが、スマホやタブレット(多機能携帯端末)の普及で、ネットを介しても消費者の元に動画情報を届けやすくなっています。そして、その勢いは個人レベルまで拡大し、個人で商品の紹介、販売までを動画配信で行えるようになったのです。

 テレビ通販大手は、2000年代前半に成長を謳歌したテレビ通販市場に代わって台頭したネット通販への対応を迫られています。鍵を握るのが動画。ネット放送はテレビのように長時間、連続して視聴しません。消費者を画面につなぎとどめるのに必要な要素は何か。数年前になりますが高田明社長はまず、「インタラクティブ(双方向)というネットの特性」を挙げています。ツイッターなどソーシャルネットワークによるコミュニケーションを想定しているのです。ネット通販ビジネスでも、顧客とのコミュニケーションを重視し、その方法を模索しているのです。

小売店の対応

こうした、ネット通販業者の動向に、実店舗の販売業がどう対処すべきか。そこには、やはりコミュニケーションの強化しかないのではないでしょか。いかにインターネットが双方向のコミュニケーションを目指しても限界はあります。お互いの顔を見ながらの一対一のコミュニケーションは容易ではないでしょう。実店舗の販売員を置いて販売を行う一番の利点は、このお互いの顔を見ながらコミュニケーションが取れる点のみと言っても過言ではないでしょう。

福岡市西区橋本の木の葉モール橋本の「はしもとまるしぇ」に出店する「やおや植木商店」は、お客との対話を重視し、生きる源・野菜の情報で勝ち残っているのです。創業87年を迎えた同店の好調ぶりからは、量販店などに劣勢を強いられる小売専門店における今後の生き残り戦略を垣間見ることができます。わずか20坪足らずの売場で、レジを含め10名近くのスタッフが、休む間もなくお客さんに熱心に商品説明を行なっています。同店では対話をしながら販売をしているのです。福岡市西区橋本の木の葉モール橋本に2011年4月12日にオープンした「やおや植木商店」(以下、植木商店)は正真正銘の八百屋です。1日当たりの延べ集客数は、平日が最低900人から多い時では1,400?1,500人。土日の多いときには4,000人が訪れる日もあります。多い時はレジ待ちで30分、1時間待ちということもザラにあるこの八百屋は、お客さんとの対話を重視した接客で、小売業界でも全国的に注目を集めました。今も、フェイスブックやブログで旬の野菜の情報を発信しながら、店舗に呼び込み、対話重視の営業を続けています。

また、自店の足元商圏のお客様を固定客化することを目的とした従業員教育の講座として、コンシェルジュ店長研修を行う経営コンサルタント会社もあります。顧客接点を持つ従業員の教育は、経営コンサルタントとしても重要視しているポイントとなっているのです。

コミュニケーション力

優れたセラピストのノウハウを研究した神経言語学として、NLP(ニューロ・リンギスティック・プログラム)というものがあります。コーチングやカウンセリングに生かされている心理学の一種で、コミュニケーション力を高める研修としても利用されています。その手法は、まず相手を理解することに始まり、信頼関係を築くことを目的としています。そして、このNLPではコミュニケーション力は誰でも習得可能な「技術」であるとしているのです。

私が参加したNLPの研修では、医師や看護師などの医療関係者の参加が目立ちました。なぜ参加したのか?数人の医師に聞くところによると、患者との信頼関係を築くのにコミュニケーション力が欠かせないらしいのです。インフォームド・コンセントや問診の場で、ゆっくり時間をかけたいが、患者さん全員に対応するには時間限られている。限られた時間で、患者の話を良く聞き、信頼関係を築き、伝える技術が必要なのです。そして、やはり患者との関係性を強くすることが何よりも重要なのです。

実店舗の販売員に求められること

実店舗において、双方向コミュニケーションで脅威となりそうなネット通販との相違は、対面でのコミュニケーションの機会だと言えます。この機会を生かすことが実店舗の強みとなるのです。その機会を生かすには、販売員が顧客との関係性を築くためのコミュニケーション力を高めることが、大変重要なのです。販売員を非正規雇用でまかなっていた小売店も、最近では、正規雇用に切り替える傾向が見られます。販売員の待遇改善は、店頭販売員強化策の一手段であり、販売員に対する期待の表れでもあります。今後は、顧客をよく理解し、顧客との関係性を築き、商品の価値、サービスの価値を伝えるコミュニケーション力が販売員には求められるのです。また、そのための教育が、小売店にとっては売上拡大のチャンスであり、差別化された競争力に繋がると確信します。