「左を制するものは世界を制す」
ボクシングで語られる言葉。ジャブの技術に長けた選手が、世界最強の座を手にするとする格言です。「左ジャブ」=「基本」との考えから、基本の重要性を説く言葉となっています。逆に言えば、「左ジャブ」=「基本」が出来ないとチャンピオンにはなれないここ、ということです。
エクセルにも、「表ができる」、「グラフができる」より以前に重要な基本があります。この重要な基本が、絶対参照なのです。できるビジネスマンとして、この基本は絶対に身につけましょう。
セルの参照
言うまでもなくエクセルは表計算ソフトです。大量の計算を瞬時にこなせます。使い方は、いろんなセルにある数字を指定しながら、答えを出すセルに式を作って計算を行います。
例えば、税抜き金額に消費税率を掛けて、税込み金額を算出しようとするとき、
セルC2に「=B2*1.08」と入力して、
その式をセルC3〜C6に貼り付ける…
すると税込み金額が正しく計算されます。しかし、もし消費税率が10%に改定されることになったら、それぞれのセルの消費税率を変える事になります。セルC2の消費税率を10%に修正してコピペするだけではありますが、スマートではありません。こうしたらどうでしょう。
セルC2に「=B2*F$2」と入力して、
その式をセルC3〜C6に貼り付ける…
こうすると、F2の値を1.1に変更するだけです。
こうして特定のセルを参照することを絶対参照と言います。
お気付きの通り、「$」が絶対参照をコントロールする記号です。この記号で行列をコントロールするわけですが、これがなかなか慣れることができない。で、苦手意識が芽生える。ここで折れたら、一生面倒な数式をセル一つ一つに埋める事になるわけです。
慣れれば、いろんな関数と組み合わせて様々な分析やシミュレーションに応用できます。ここで苦手意識を吹っ飛ばしましょう。
九九表
九九表は皆さんご存知ですね。小学校2年生で目にします。この九九表をエクセルで作成できれば、絶対参照を制したと言っても過言ではありません。と言う事でやってみましょう。
下の表を作成してください。
赤の帯の数字と青の帯の数字を掛け合わせて九九表を作成します。
まず、セルB2に「=A2*B1」と入力してみます。左が赤、右が青のセルを指します。もちろん表示される数字は「1」です。
この式を横にコピペしてみましょう。すると…
ご覧のように、とんでもない答えが算出されます。
このときの、各セルの式は、
となっており、青の参照先は正しいけど、赤のセルの参照先がA1、B1、C1、D1とずれてしまっていることがわかります。これが間違った答えの原因です。
赤いセルの1という数字は動かしたくないので、赤い帯の数字の列は固定すべきなのです。つまりA列を動かしたくないので、セルB2に「=$A2*B1」と入力して横にコピペすると、セルの式は、
となり、
ご覧のように正しい答えが表示されました。このように、列を固定して参照することを「列の絶対参照」と言います。
さてそれでは、このB2からJ2の式を下までコピペして表を埋めてしまいましょう。すると…
またまた、とんでもない数字が…。式を確認すると…
左の参照先は正しいけど、右の青の参照先が、1行、2行、3行、4行、とずれていることが分かります。これが間違った答えの原因です。
先頭行の青いセルは動かしたくないので、青い帯の数字の行は固定すべきなのです。つまり1行目は動かしたくないので、セルB2の式を「=$A2*B$1」に変更し
ます。改めて横にコピペし、さらに下にコピペすると、セルの式は
となり、
ご覧のように、正しい九九表が完成しました。このように、行を固定して参照することを「行の絶対参照」と言います。
ちなみに、列も行も固定して、特定のセルのみを参照することを「セルの絶対参照」と言います。「=$A$1」のように、アフファベットの前と数字の前の両方に$を付ける場合がセルの絶対参照なのです。
最初に申し上げた通り、この絶対参照は基本です。これをマスターせずに、いろんな関数を覚えたところで、仕事の生産性は上がりません。この、九九表がサクッとできるまで、定期的に作成する練習をしてください。「あれっ?」「あれっ?」を繰り返すうちに自然と身につくはずです。仕事まえのウォーミングアップに、まず九九表を作ってみるくらいやれば、誰だってできるようなります。頑張りましょう!