食品工場について勉強中に、ハム会社のニュース。
伊藤ハム ウインナー自主回収 卵を検出
伊藤ハムはウインナーから本来は含まれない卵が検出されたとして、自主回収。スーパー向けの商品では「適量適価皮なしウインナー90g」と「Vパック皮なしウインナー280g」のうち賞味期限が3月24日、28日、30日、4月3日、4日のもの。https://t.co/baYoDCjORC
— NHK@首都圏 (@nhk_shutoken) March 12, 2018
やっちゃいましたねー。
でも、なーんで本来含まれない物質が混入するんだろうって思いません?
全く工場を知らない人は、なんか悪いことでもやってるんじゃないか?とか、調合ミス?とか、不安になることを想像するのではないでしょうか?
あっちゃならないけど、食品工場ではあり得る事故なんです。
食品って賞味期限があるから、美味しく提供するには、大量に作りだめする訳には行かず、できるだけ短い間隔で都度製造します。コンビニの弁当なんて、日に何回も同じものを作るんです。
そうすると、当然、同じラインで、作っては清掃、作っては清掃、の作業を繰り返して複数の商品を作ることになるんです。商品の数だけラインを用意する訳にはいきませんからね。
で、前に作った商品の食材が、何らかの要因で次の商品に混ざるって可能性は、0ではないんです。商品ごとに手袋は変えるけど、袖に付着していたとか、ラインの掃除が不充分だったとか、機械の洗浄が不充分だったとか。きちんとした運用ルールがあっても、人間のすることですからね。
このような、混入のリスクがあることを「コンタミネーション」(通称、コンタミ)と言います。コンタミのリスクに気づいていても、コンタミの表示義務はありません。
混入した時のリスクは?
やっぱり、アレルギー反応による事故でしょう。
現代は、アレルゲンによるアナフィラキシーショックで死ぬこともあって、アレルゲンの表記は義務付けられています。
表示が義務づけられている特定原材料7品目は、
- 乳・卵・小麦・そば・落花生・えび・かに
表示が推奨されている特定原材料に準ずるもの20品目は、
- あわび・いか・いくら・オレンジ・キウイフルーツ・牛肉・豚肉・鶏肉・くるみ・さけ・さば・大豆・まつたけ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン・バナナ・カシューナッツ・ごま
今回の混入物の卵は特定原材料7品目の一つ何です。それだけ、アレルギー反応による事故の危険性が高いってことです。
もし、卵アレルギーの人が、卵が表示されていないので、安心してたくさん食べたとしたら、最悪の事態も想定できるのです。だから、自主回収ってことになるんです。
飲食店でも、「うどんと蕎麦の麺は同じ釜で茹でています。」という張り紙があったりしますよね。これは、「蕎麦アレルギーの人がうどんを食べても、微量の蕎麦のコンタミがあり得ますからね。」って注意喚起なんです。強度のアレルギーでなければ、問題ないレベルだと思いますが、こればかりはねぇ。死なれちゃ困るし。
コンタミ防止策は?
対策としては3つあります。
1.マニュアルの徹底
とにかく、マニュアルを徹底することです。加工の手順、掃除の手順、消毒の手順。そのプロセスから温度まで全てを、ルール通りに行うこと。毎回手袋を変えているか?掃除は充分か?作業者同士でチェックするとか、監視役が付いているとか、意識の高い運営が必要です。ヒューマンエラーを徹底排除する職場の雰囲気、企業風土を根付かせることです。もちろん、アルバイトや派遣さんを運用する場合も例外なくです。
2.製造プロセスを常に確認する
アレルゲン物質が少ないものから調理するとか、アレルゲンの種類別にラインを編制するとか、ミスがあっても混入のリスクがない製造プロセスを作り上げることです。作業者だのみの状態では、ヒューマンエラーの心配が排除できません。極力、混入の可能性が少ない製造プロセスを常に考えて改善に努めなければなりません。
3.製造機器の見直し
商品を切り替えるたびに洗浄しているはずですが、機械の中は分解しないと見えません。毎回、分解洗浄していればコンタミのリスクは激減しますが、毎回分解ってのもねぇ。人命には変えられませんから、やらなきゃなりませんけどね。で、そうしたとしても、細かなキズに隠れたアレルゲンが原因になる可能性も否定できません。考えればキリがありませんが、これは、想定できるリスクを極力排除できる機器を選ぶしかないでしょう。手軽に分解洗浄が行える機器とか、食材通路が傷つかない機器とか。
一般的な改善手順
食品工場に特化してお話ししましたが、一般的に工場、いや工場に限らず、改善の手順としてECRSの原則というものがあります。
- E:Eliminate(エリミネート)【排除/そもそも必要なのか?無くせないか?】業務の目的をもう一度見直し、その業務は無くせないかを考える。
- C:Combine(コンバイン)【結合/一緒にできないか?同時にできないか?】業務をまとめて一緒に処理することで、かかる時間を短くできないかを考える。
- R:Rearrange(リアレンジ)【交換/順序の変更はできないか?人の変更は?】仕事や作業の順序を入れ替えることで、効率的にならないかを考える。
- S:Simplify(シンプリファイ)【簡素化/単純化できないか?】もっと省略したやり方で、同じ結果を生み出せないかを考える。
この順番は、改善の効果の高い順番でもあります。先ほどのコンタミ対策で考えて見ましょう。
例えば、Eだと、人を排除。全て機械化してヒューマンエラーを無くす。とか、アレルゲン自体を使わない商品を開発とか…。流石にこれは無理か?
Cだと、同じアレルゲン同士をグルーピングして製造ラインを編制する(切り替え時の掃除が不要になる?)とか、製造時間を区切るとか。
Rだと、アレルゲンの少ない商品から製造するとか、アレルゲンを入れる部屋を完全に別室にできるように工程を並べ替えるとか。
Sだと、チェックさえできればいいのだから、コンタミを確認できる機械を導入する。とか。(ちなみに、こんな機械は現在のところ存在しません。)
とまぁこんな感じでしょうか?
とにかく、工場は、日々改善です。そこが、人間が製造に関わる意義です。でなければ、機械にやらせますって。