今日の新聞は、ベアアップの記事が多く見られ、サラリーマン時代を懐かしく感じておりました。まぁ、ヨコヨコの比較から、あの業界が上がるならうちも上がらなきゃ嘘だよなぁ、程度の興味はあったように思います。しかし、気になって仕方ない…ってほどでもなかったような?
賃上げ、働き方改革 中小企業が苦渋の決断:日本経済新聞 https://t.co/iP3I8FXe9B
— 坦懐 (@tankai1003) March 14, 2018
仕事のモチベーションにどれほど影響していたのか?モチベーション理論を振り返って見たいと思います。
内容理論と過程理論
モチベーション理論は内容理論と過程理論に分けられます。
内容理論は、「何が行動を活性化するのか」、「何が行動を方向づけるのか」、つまり、Whatに当たる部分から考察した理論です。
一方、過程理論は、「行動はどのように維持・持続されるのか」、つまり、WhyやHowから考察した理論です。
何事も流れで覚えた方が覚えやすいので、モチベーション理論の変遷から確認します。
モチベーション理論の変遷で見ると、1950年代までは、1943年アブラハム・マズローが発表した5段階欲求説のように人間の内面に焦点を当てた理論が主流でした。(マズローの説が有名になったのは20年後の1960年代ですが、そのころの学者には影響を与えていたようです。)
【代表的な内容理論】
1943年「欲求5段階説」マズロー
1959年「二要因理論」動機付け・衛生理論 ハーズバーグ
1960年「X理論・Y理論」マクレガー
1970年「未成熟-成熟理論」アージリス
そのあとロックの「目標設定理論」やブルームやポーターの「期待理論」など「人はどうやって動機づけられるのか」という動機づけの「過程」を重視し、目標設定やインセンティブによる外発的動機づけ理論へと推移しています。
【代表的な過程理論】
1964年「期待理論」 ブルーム
1965年「公平理論」アダムス
1968年「期待理論」 ポーター&ローラー
1984年「目標設定理論」ロック&レイサム
流れとしては、内容理論から過程理論、内発的動機付けから外発的動機付けへと移っていることが分かりますね。
では、内容理論から
内容理論
マズローの5段階欲求
ピラミッドの下から「生理的欲求」、「安全欲求」、「社会的欲求」、「承認欲求」、「自己実現欲求」の5段階で構成されるという説ですね。
最も低次にある「生理的欲求」は、「食べたい」、「寝たい」といった本能的、基本的な欲求だとされます。
そして生理的欲求が満たされると、「安全に生活したい」、「健康でいたい」といった安全や安定を求める「安全欲求」が現れる。
そして安全欲求が満たされると、「仲間が欲しい」「繋がりが欲しい」といった「社会的欲求(帰属欲求)」が芽生えてくる。
ここまでが、低次元欲求とされます。新入社員として働き始めた頃に、こんな欲求を感じながら過ごした記憶はありませんが、確かにこの順番は無くては困る順番で、順番が入れ替わることは無いように感じます。
そして、4段階目が「承認欲求」です。「認められたい」「尊敬されたい」というお金や物では解決できない名声や評判など、尊厳に関わる欲求です。
承認欲求が満たされると、次に表れるのが「自己実現欲求」です。周りからみてどうこうより、自分自身が納得できる、より高みを求める欲求が生まれてくるのです。
以上を振り返ると、確かに納得性はあるものの、科学的根拠は無いため、批判をする人もいたようです。ただ、今でもモチベーション理論の先鋒として語られ、存在すること事態が、モチベーションの本質を言い表している証だとも言えます。
晩年には、第6の段階として「自己超越」を加えています。社会貢献意欲の芽生を表しているんですね。これも納得です。
ハーズバーグの動機付け・衛生理論
動機付け・衛生理論は、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した、職務満足および職務不満足を引き起こす要因に関する理論です。元々は、1959年にハーズバーグとピッツバーグ心理学研究所が行った調査における分析結果から導き出されたものです。ここが、他のモチベーション理論と異なる点で、データの無い仮設でなく、きちんとした実験によって導き出された結果をまとめた理論だということです。
その実験は、アメリカ、ピッツバークで200人の技術者と経理担当者に対して行われ、全ての被験者に対して、「仕事上どんなことによって幸福と感じ、また満足に感じたか」ということと、「どんなことによって不幸や不満を感じたか」という2点について質問を行うというものでした。
その結果から、人の欲求には二つの種類があり、それぞれ人間の行動に異なった作用を及ぼすことがわかりました。
その一つは、あると満足に繋がる「動機づけ要因」で、もう一つが、無いと不満足に繋がる「衛生要因」です。
動機づけ要因の主なものは、「昇進・昇格」「責任」「権限」「達成感」などです。
衛生要因の主なものは、「監督」「給与」「対人関係」「作業条件」などです。
面白いのは、給与が衛生要因だということですね。多ければ多いほど、動機づけになりそうですが、そうでは無く、少ないと不満が生じるという点で衛生要因となるようです。
衛生要因をマズローの低次元欲求、動機付け要因を高次元欲求と重ねることもできます。
マクレガーのX理論・Y理論
「人間は元々、働きたがらない」とするX理論と、「人間は元々、働きたがるものだ」とする理論を提唱したのがマクレガーです。
X理論に当てはまる人は、「アメとムチ」によってコントロールすることが必要とされます。
そして、Y理論に当てはまる人は、自己実現を目指す気質があるとされ、その欲求を支援することで積極的に働いてくれることになります。
過程理論
ブルームの期待理論
がんばればどれだけのことが成し遂げられ(期待)、
それが成し遂げられたらいったいさらになにがもたらされ(用具性)、
もたらされたものそれぞれにどれだけの値打ちがあると予想されるか(誘意性)、
についての知覚、信念や態度という心理的過程がモティベーションを左右している。
【引用】ビクター・H・ブルーム『仕事とモティベーション』
簡略化した数式で表すと以下のようになります。
【モチベーション=期待×誘意性】
それまでのモチベーション理論は、人が行動を起こす欲求の内容に着目した内容が主流でした。しかし、ブルーム、ポーター&ローラーは、モチベーションの生じる過程に着目して複雑な仕組みを解明し、誰もが応用できるように数式あるいはモデルを用いて抽象化しました。
これにより、モチベーションが生じる人間の心理は複雑であり、モチベーションには個人差があることを明らかにしました。期待理論は、その後のモチベーション理論の研究だけでなく、ビジネスや教育などの幅広い分野でモチベーション管理に活用されています。
アダムスの公平理論
モチベーションの世界に公平感を持ち込んだのが、アダムス (1965)が発表した公平理論です。
アダムスは、人は自分が仕事に投入したもののすべて(努力・経験・スキル・知識など。これを公平理論ではインプットという)と仕事から得たもののすべて(昇進や昇給、昇進に伴う特権・社会的ステータスの向上など。これを公平理論ではアウトプットという)の割合と、他者が仕事に投入したインプットと仕事から得たアウトプットの割合を比較して、この両者の比率が同じだと感じたときに公平感を感じ、モチベーションを向上させると主張しました。
まとめ
実際の仕事場で、これらの理論を物差しにして測るのは難しいでしょう。しかし、原則を知っているか、知らないか、では、組織運営の結果に少なく無い差を生むと思います。
社員の価値観が多様化している現代では、各欲求段階だけでは無く、その人の価値観も含めて捉えたいところです。